なぜそうなるか

家を売るときの仲介手数料には上限がある——国土交通省の告示は、代金800万円以下の宅地・建物に限り「30万円の1.1倍」までの特例を置いていました

家を売ろうと決めて不動産会社に相談すると、どこかの段階で仲介手数料の話が出てきます。売れたときに払うお金なので、金額の大きさが気になる方は多いでしょう。

手数料の額は会社ごとに自由に決まるのか、それとも決まりがあるのか。ここがはっきりしないまま、提示された額にうなずいてしまうこともあるはずです。

調べてみると、この手数料には国の定めた上限がありました。宅地建物取引業法にもとづいて、国土交通大臣が告示という形で出しているものです。

そこで、国土交通省が公開している告示の本文を開きました。題名は「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」です。

あわせて、令和6年に行われた見直しを1枚にまとめた、国土交通省の概要資料も並べて読んでいます。どちらもPDFで、記事の中の言い回しはこの2つの書き方のままです。

どの会社に頼むのがよいか、手数料がいくらなら妥当かは、この記事では扱いません。上限の決まり方を、原文に書かれている範囲で並べます。

この記事でわかること
・売買の仲介手数料は、国土交通省の告示で上限が決まっている
・上限は、代金を200万円・400万円の線で区切り、それぞれの部分に割合を掛けて合計する
・上限は依頼者の一方につきの額で、消費税等相当額を含む
・代金800万円以下の宅地・建物は「低廉な空家等」とされ、30万円の1.1倍まで受け取れる特例がある
・上限の範囲内で、報酬額を事前に説明し合意する必要があると、通達に明記された

仲介手数料は、会社が自由に決めているの?

不動産会社に払う手数料って、決まりはあるの?

国土交通省の概要資料は、宅建業者が依頼者に請求できる報酬額に上限が設けられていると説明しています。

令和6年の見直しを説明する概要資料は、最初に「報酬規制の現状と課題」として、いまの決まりの位置づけを書いていました。

宅建業法において、宅建業者が媒介・代理の依頼者に請求できる報酬額に上限を設定(法第46条に基づく大臣告示)

上限を決めているのは法律そのものではなく、法第46条を根拠にした大臣の告示だという書き方です。告示の本文は、国土交通省のサイトにPDFで置かれています。

告示はいつのものなの?

告示の見出しの下には、もとの告示の日付と、最後に改められた日付が並んでいました。もとは昭和45年10月23日の建設省告示第1552号で、最終改正は令和6年6月21日の国土交通省告示第949号です。

概要資料のほうは、この見直しを「令和6年6月公布、7月1日施行予定」と書いていました。資料が作られた時点では、施行の前だったことになります。

上限は、どうやって計算するの?

売れた値段の何パーセント、という決まり方なの?

告示の第二は、代金を金額の段ごとに区切り、それぞれに割合を掛けて合計した額以内とすると定めています。

売買の仲介(告示では「媒介」)の上限は、告示の第二にあります。第二は、宅地建物取引業者が消費税の課税事業者である場合の決まりとして書かれていました。対象になる代金の区切り方は、次の一文でした。

当該売買に係る代金の額(当該売買に係る消費税等相当額を含まないものとする。)

つまり、区切りの計算に使うのは、税を含まない代金の額です。そのうえで、計算の方法が続きます。

次の表の上欄に掲げる金額に区分してそれぞれの金額に同表の下欄に掲げる割合を乗じて得た金額を合計した金額以内とする。

表の中身は3段です。200万円以下の部分が百分の五・五、200万円を超え400万円以下の部分が百分の四・四、400万円を超える部分が百分の三・三でした。

二百万円以下の金額百分の五・五

代金全体に1つの割合を掛けるのではなく、段ごとに違う割合を掛けて足し合わせるという仕組みです。

売る側と買う側の両方から受け取ることはあるの?

上限の額が誰についての額なのかは、告示の第二の書き出しで分かります。

依頼者の一方につき

1つの取引で、売る側と買う側の両方が同じ会社に頼んでいる場合もあります。そのときの上限は、それぞれの依頼者についてこの計算で決まる、という読み方になります。

3,000万円で売れたら、上限はいくら?

ここからは当方の計算です。税を含まない代金が3,000万円だったとして、告示の表どおりに段ごとに掛けてみました。

合計すると105万6,000円です。告示の割合は、消費税等相当額を含んだ額として決められているので、この額も税込みの上限にあたります。実際の手数料が上限と同じ額になるとは限らず、この記事ではそこまでは確かめていません。

安い物件だと、上限は変わるの?

空き家や安い土地だと、手数料の決まりが違うって聞いたけど?

告示の第七は、代金800万円以下の宅地・建物を「低廉な空家等」とし、30万円の1.1倍まで受け取れる特例を置いています。

告示には、第七として「低廉な空家等の売買又は交換の媒介における特例」がありました。まず、対象になる物件の決め方です。

八百万円以下の金額の宅地又は建物をいう。

この金額も、税を含まない代金の額で見る決まりでした。そのうえで、特例の中身が書かれています。

当該媒介に要する費用を勘案して、第二の計算方法により算出した金額を超えて報酬を受けることができる。

ただし、超えてよい額にも天井があります。上限は「三十万円の一・一倍に相当する金額」と、同じ第七の中で決められていました。

当該依頼者から受ける報酬の額は三十万円の一・一倍に相当する金額を超えてはならない。

概要資料は、同じ特例を1行にまとめた形です。

低廉な空家等(物件価格が800万円以下の宅地建物)については、当該媒介に要する費用を勘案して、原則による上限を超えて報酬を受領できる(30万円の1.1倍が上限)。

500万円と800万円で、どれだけ違う?

ここも当方の計算です。30万円の1.1倍は33万円になります。

税を含まない代金が500万円なら、第二の計算では11万円+8万8,000円+3万3,000円で、23万1,000円です。第七の特例を使うと、33万円までが上限になります。

代金がちょうど800万円なら、第二の計算でも11万円+8万8,000円+13万2,000円で33万円になり、特例の上限と同じ額でした。800万円に近いほど、特例で上がる幅は小さくなる、という関係です。

手数料の額は、いつ決めるの?

上限までなら、あとから言われた額を払うしかないの?

概要資料は、媒介契約を結ぶ前に、上限の範囲内で報酬額を説明し、合意する必要があると通達に明記したと書いています。

概要資料のいちばん上には、報酬を受ける際の留意点として、次の一文が置かれていました。

媒介契約の締結に際しあらかじめ、上記の上限の範囲内で、報酬額について依頼者に対して説明し、合意する必要があること

この一文は、宅地建物取引業法の「解釈・運用の考え方」という通達に明記された、と続いています。額の話は、売れたあとではなく、媒介契約を結ぶ時点で出てくるという順番です。

通達そのものの本文は、この記事では読んでいません。特例の額を受け取れる場面や、説明の方法の細かな決まりは、通達の原文で確かめる必要があります。

家を売って利益が出たときの税金については、住まなくなった家を売るときの3,000万円の特別控除を、国税庁の案内から整理した記事にまとめました。

この記事で確認したこと

家を売るときの仲介手数料の上限
・売買の仲介手数料の上限は、宅地建物取引業法第46条にもとづく大臣告示で決まっている
・上限は、税を含まない代金を200万円・400万円の線で区切り、5.5%・4.4%・3.3%を掛けて合計した額以内
・上限は依頼者の一方につきの額で、消費税等相当額を含む
・代金800万円以下の宅地・建物は、第二の計算を超えて、30万円の1.1倍まで受け取れる特例がある
・媒介契約の締結に際し、上限の範囲内で報酬額を説明し合意する必要があると、通達に明記された

手数料の額は、媒介契約の前に示されるものです。提示された額と、告示の段ごとの計算で出した上限を、契約書に署名する前に並べて見てください。

よくある質問

表の割合は、税込みですか、税抜きですか

告示の第二は、受け取れる報酬の額について「当該媒介に係る消費税等相当額を含む。」とあります。一方で、段を区切るときに使う代金の額は、税を含まないものとされています。

800万円以下なら、必ず33万円を払うのですか

第七は、33万円は「超えてはならない」上限として置かれた額です。払う額が必ずその額になるとは書かれていません。どの額で合意するかは、媒介契約の前の説明と合意の場面の話です。

家を貸すときの仲介手数料も、同じ計算ですか

告示は、貸借の媒介を第四として別に定めていました。借賃の1か月分をもとにした別の決まりで、この記事で整理した売買の計算とは違います。

この整理が変わる条件


出典

媒介契約に署名する前に、示された手数料の額を、告示の原文と見比べておいてください。

当方が上の出典を引いて確かめた日:

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